葛根湯を自分で作ってみる

■プロローグ

先日、同僚の奥さんが風邪をひきましてね。「何か治んねぇなぁ」と言ってたら本人にも伝染ってしまったらしく夫婦で寝込んでしまいました。数日して「こりゃあマズいんじゃねぇか」という状況になったので、あわてて病院に行った所・・・なんと2時間待ちの大混雑!おまけに「おい風邪で来てる奴ら!お前らはこの黄色いテープからこっちに入ってくんな!それからこのマスクでもしてろや!伝染るから!あーえんがちょ!」と、ほぼバイキン扱い。同僚の症状は本人曰く「何回か死ぬかと思った」というほど重く、待合室では起きてられずにソファーで横になっていました。そして2時間後、ようやく診察の時が!


医者「あーこれインフルエンザですね。家で寝ててください。薬とかいらないからね。寝てれば治るから。
友人「あぁ、なんと有難いお言葉。死ぬ思いで家を出てきて2時間も待った甲斐がありました!先生、本当に有難うございました!」


ま、カナダは医療費が無料という事もあってですね、色々作法も日本と違うわけです。かのマイケル・ムーアさんもカナダの事を大絶賛しておりましたがだったらお前なんで引っ越して来ねぇんだよ!!!!ただ北米では風邪に対する対処法も日本と違いまして、基本的には「ただ家で寝てる」です。あまり薬は飲みません。仕事に行かないのでマスクも必要ありません。風邪の時飲む薬と言ったらアドビルやタイレノールと言った頭痛薬になります。
シロメは今まで、日本から持ってきた大量の風邪薬、胃腸薬のストックで乗り切っていたのですが、この秋とうとう底をついてしまいました。これではこの冬を乗りきることができない!でも風邪薬が無いなら葛根湯を作って飲めばいいじゃない?オホホホホ!!というわけで私、葛根湯作りに挑戦してみました!


■葛根湯とは何ぞや

葛根湯は3世紀ぐらいに、張仲景という人が書いた傷寒論という本に出てくる漢方薬なのだそうです。「じゃあお前中国雑貨店とかに行けば売ってるんじゃね?」と思うでしょうが、どうも中国と日本の漢方はその後別々の進化を遂げたらしく、現在かの国では葛根湯はほとんど知られていません。その代わり板籃根というものを飲むらしいのですが、これはどうも葛根湯とは違い熱を下げる方向の薬のようです。※今回漢方の色々な話が出てきますがシロメはド素人です。詳しい方からのツッコミお待ちして折ります。

作り方についてはこのような記述があります

葛根湯方 葛根四両 麻黄三両去節 桂枝二両去皮 生姜三両切 甘草二両炙 芍薬二両 大棗十二枚擘
右七味、以水一斗、先煮麻黄、葛根、減二升、去白沫、内諸薬、煮取三升、去滓、温服一升、覆取微似汗。余如桂枝法将息及禁忌、諸湯皆倣此。

http://www.aurora.dti.ne.jp/~saiun/shiryo/shokan.htm
http://medical.radionikkei.jp/tsumura/final/pdf/090408.pdf
http://74.125.93.132/search?q=cache:fFGy2Yq8QMUJ:touiken.otogirisou.com/dat/07/08.pdf


■葛根湯レシピ

結局素人なりに考えた結果、このようなレシピになりました。同僚の中国人に意味を聞きながら頑張ったのですが「昔の言葉だから読めねぇ」と弱音を吐くので「お前なんか中国人じゃねぇ」と罵倒してやりました。

□材料

  • 葛根 56g*1
  • 麻黄 42g
  • 桂枝 28g
  • 生姜 42g
  • 甘草 28g
  • 芍薬 28g
  • 大棗 42g*2
  • 水 1800ml(10合ほど)*3

□作り方

  1. 水10合(1800ml)を鍋に入れる
  2. 葛根と麻黄を先に入れる
  3. 煮て水が2合(360ml)減るのを待つ
  4. 白い泡を取る
  5. 残りの薬草を全部入れて煮る
  6. 3合(540ml)減るのを待つ
  7. カスをこす
  8. そのうち1合(180ml)を飲む


■下準備


これが各生薬のサンプルです。町にある3つの中国雑貨店を駆けずり回って集めてきた品々でございます。



これが葛根。でけぇ。芋みたいですが、匂いが粉っぽいというか薬っぽいです。これはいわゆるクズの根と言われるやつで、葛餅なんかはこれが原料なのだそうです。Linux使いの方は起動時のアレでお馴染みですね。kudzuです。実は英語にもなっとります。



これが桂皮。木の皮ですねコレは完全に。コレ要するにシナモンなのだそうです。



これが芍薬。「立てば芍薬」の芍薬。こんな美しいうえに薬にもなるなんて恐ろしい子。根を乾燥したものらしいです。えっと何かアンモニア臭いのですが・・。



これが甘草。なんか匂いがカレーっぽいんだけど気のせい?イヤイヤ、イヤ違うって黄色いからとかじゃなくって。ほんとカレーの匂いだって。



大棗です。なんか酢でしめたような匂いがするんですがコレ腐tt・・・・。


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そしてこれが麻黄。うーむ確かに名前の通り黄色いボディだ・・・。
はいはいはい、そこうるさいですよー。しーずーかーにー。しーずーかーにー!!皆が静かにしないと先生話せませーん。麻黄は注文したけど届いてなかったんですー。仕方がないんですー。
お店に言ったら来週になるって言われましてね。「来週って遅すぎるだろ!貴様がこうしている間にも蒋介石率いる国民党軍は勢力をのばしているのだぞ!資本主義の犬め!革命戦士としての誇りを持て!」という気持ちを抑えて笑顔で「じゃまた来週来ますね☆」と言って出てきました。


あと写真撮るの忘れちゃいましたが生姜はお馴染み、ショウガですね。


■作ってみる


水1800ccを入れます。そして葛根を投入。中火で煮ます。本来はここで麻黄も入ります。



葛根から何か白いヌルヌルした物が出てきています。なんかこれアレの匂いがするんだけど・・・。イヤイヤ見た目とは関係なしに。とにかく浮いてきた泡を取ります。大体泡を取っている間に2合ぐらい水が減ります。



残りの生薬を全て投入、さらに煮ます。ここからじっくりコトコト煮込みます。



しばらくすると元の半分ぐらいになります。すっごい葛根湯の匂いがします。部屋中葛根湯の匂いでいっぱいです。


できたものをクッキングペーパーでこして完成!あぁ、なんて綺麗な黄金色でしょう・・。味はまさに葛根湯です。ちょっと市販の薬に比べると味がしつこいかな・・。

で、肝心の効果は麻黄が入ってないし、感覚的なものだし何とも言えないのですが、少なくとも体は結構暖まります!あと飲んだあとはよく眠れて、朝の頭痛が完全にひきました!

*1:漢の時代1両は14.167gだったらしい

*2:大棗の十二枚擘はよく分からないので3両扱い

*3:漢時代の1升は今の1合1勺。1合は180.39ml